The Road Not Taken・岐路
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会期: 2022年12月17日[土] 〜25日[日](会期中無休

開場時間:平日12:00〜17:00、土日12:00〜19:00

この度、山中suplexの別棟 「MINE」では周逸喬(シュウ・イッキョウ、1995年中国・湖南省生まれ、京都在住)とタリア・ファルコン・ニザラネ(1997年キューバ・ハバナ生まれ、イギリス・ロンドン在住)による二人展『The Road Not Taken・岐路』を開催します。2人は京都で出会い、互いの複雑な背景に共感したことをきっかけにこのコラボレーションを実現しました。他者の固定観念という視線を抱えて生きてきた周とニザラネは、自らのアイデンティティの問題と向き合うことで、現実の脆さを作品で探究しました。「個である」ことを体現するプラットフォームでもあるMINEは、2人の思考と実践に共感し、よい相関関係が生み出されることを企図し、本展のために2つの親密な部屋を提供します。 

畳の部屋の中央には、周が近年手がける「蘭花指」(らんかし)をモチーフにした最新作の一つ《Shuang Xi 双喜》(2022)が展示されます。蘭花指は、無性別の仏像に由来する伝統的な要素ですが、やがて伝統京劇に登場する悲劇を演じる女性人物によく使われる仕草となりました。周の蘭花指に対する執着は、中国文化において女性や男性のアイデンティティがいかに伝統的な理想に囚われているのかという事実を突きつけます。彼女がこの仕草を「装飾的」または「楽しい」ものとして強調するのは、社会が暗に要請してきたネガティブな意味合いを取り除こうとする態度からです。

もう一方の部屋には、ニザラネによる《Self Preservation》(2022)が展示されます。彼女にとって漆を用いた初めての作品である本作は、例えば水といった自然物が、いかに人間の欲求によって改変されて存在しているかを探求しています。水たまりの形を残すことで、ニザラネは雨水のもろさを描き出すと同時に、自然の持続力と回復力を明らかにします。水は、彼女の故郷であるキューバが海に囲まれていることと関連すると同時に、キューバからアメリカへの移民の歴史とも共鳴していて、彼女の作品に繰り返し登場する要素でもあります。また、映像作品《A Game of Pretend》(2022)では、2つの腕が相互に力を掛けあう様子が映し出されますが、ここでは世界の隠れた緊張関係が見ることができます。

本展のタイトルにもある「The Road not Taken」は、アメリカの詩人ロバート・フロストが描く森の中で2つの道の選択肢に直面する場面に由来していますが、これは私たち誰もが人生で直面する避けられない瞬間であると言えます。このフレーズは、多くの人が軽視してきた道を選ぶ行為を指すと同時に、選ばれなかったもう一つの道に着目するという意味があります。「The Road not Taken」はアーティストが型にはまらない道を選ぶこと、または大多数とは反対側の道と行くこととその正当性を問うているのです。

ニザラネと周が選んだ道は、冒険的であると同時に孤独でもあります。そしてその孤独は、喪失や犠牲、または未知を伴いますが、2人は母国の文化や歴史の問題という脆い現実に立ち向かうという意識的な選択をしているのです。


会場:MINE 5階( 大阪府大阪市西区新町2-9-4 NANEI 新町 bld. GALLERY 02 街区 )

入場料 : 無料

アーティスト

《蘭花指》2021年|木・漆・螺鈿・卵殻

周逸喬(シュウ・イッキョウ)
Zhou Yiqiao

1995年、中国・湖南省生まれ、京都在住。京都市立芸術大学大学院博士課程漆芸専攻在学中。
主な個展に、「漆と絵」( 曹洞宗・興聖寺、宇治、2020 年) 、「煩悩」( 曹洞宗・西見寺、静岡、2021年) など。主な賞歴に、京都市立芸術大学 大学院市長賞 学校資料館収蔵(2021年)、韓国 清洲工芸ビエンナーレ 栄誉賞(2021年)など。主なグループ展に、「あいづまちなか アートプロジェクト展」(会津、2019年)、「アジア漆工芸交流プロジェクト展」 (上海美術大学美術館、2019年)、「生新の時2021―漆芸の未来を拓く」(石川県輪島漆芸美術館、2021年)。そのほか東京、京都を中心に銀座、松坂屋、伊勢丹など展示された。

Web https://zhouyiqiao95.wixsite.com/work

A Game of Pretend》2022年|ビデオ(04分06秒)・デジタル写真

タリア・ファルコン・ニザラネ
Talia Falcon Nizarane 

1997年、キューバ・ハバナ生まれ、イギリス・ロンドン在住。イギリスのRoyal College of Art, Contemporary Art Practice, Public Sphere 修士課程在学中。
これまでの主な個展に、「Cleaning Service 」(Schaufenster Dreiviertel、スイス・ベルン、2021年)、「UNWINNABLE」(XPO、オランダ・エンスヘデ、2020年) 、第13 回ハバナ・ビエンナーレでアーティストBeatriz Fernandez Piedraと共に「Dificultades Iniciales」(2019年)など。グループ展も含めた主な出品に、Royal College of Art CAP フェスティバルでのOff Site Project による「Here's One I Made Earlier」(イギリス・ロンドン、2022年)、ARE Hollandでの「Allée Rentrée Art Festival 」( オランダ・エンスヘデ、2020年) 、「ACT Performance Festival 」(スイス、チューリヒ、2020年)など。そのほか、AREオランダのアーティスト・イン・レジデンス(2020年)への参加や、チューリッヒ芸術大学のプロジェクト「Learning from Inequality」では助成金授与(2020年)など。彼女の作品は、スペインのベルナルド・ケトグラス・コレクションの一部となっている。

Web https://www.talianizarane.com/

キュレーター

イラン・ホウン
Ellan Huang 

1994年中国・深圳市生まれ、ニュージーランド育ち、京都在住。京都芸術大学大学院グローバル・ゼミ課程在学中。伝統的な山水画や現代の風景画を取り上げながら、東アジアの関係を研究している。

郭禹鋯(カク・ユコ)
Guo Yugao 

1995年広東省生まれ、京都在住。京都術大学大学院グローバル・ゼミ在学中。法学部の出身で、「テクノロジーによる人権侵害」の観点から、デジタルメディアアートにおける未来のテーマについて研究している。

Event

開催時間: 2022年 12月913時3014時30分 

お問い合わせ:  yamanaka.suplex@gmail.com 


オープニングパーティ

開催時間: 2022年 12月171900分〜2100分 

お問い合わせ:  yamanaka.suplex@gmail.com 


展覧会の初日に参加アーティストとキュレーターを囲んでオープニングパーティを開催します。